百白百首5 療養の心身を浄化

そともには志らゆきふれりさくさくと林檎をかみて志らゆきを見る 田波御白

作者の田波御白(たなみみしろ)さん(1885~1913)は栃木県に生まれ、27歳の若さで肺結核で亡くなった歌人。そのことを知ったうえで、友人たちがまとめた「御白遺稿」を開いているときに、見つけた歌です。

「そとも」は外面、「志らゆき」は白雪。詠んだのは、入院中のようなので、降り始めた雪を病室で見ながら、カットリンゴを食べているときの感慨を歌にしたものだと思います。この歌をメモしたのは、言葉の調べの白さ、すがすがしさからでした。「さくさくと林檎をかみて」という、オノマトペとカットリンゴに歯を入れたときの感触があざやかに湧き上がってきました。筆名の御白(本名は庄藏)も歌の白さ、すがすがしさ、さわやかさを引き立てています。

当時はまだ、リンゴが貴重品、療養の食べ物だったと思います。御白さんは、リンゴの身の白さにも目に留めていたと思います。寒さの中では、リンゴの皮の赤も目に沁みます。  療養の心身がまるごと浄化されるような感覚だったのではと想像しました。