百白百首12 生者も死者もすがすがしく

雪のやうに木の葉のやうに淡ければさくりさくりと母を掬(すく)へり  馬場あき子「飛種」

作者は亡くなった母親の骨上げ(こつあげ)に臨み、箸で拾うときのこすれあうお骨の音に心を動かされたのだと思います。「さくりさくり」という、清澄さと同時に躍動とぬくもりを感じさせる擬音語が魅力的です。

雪のように白い断片となった母親。枯れ葉のように手に取ったら崩れてしまいそうなお骨。母親への慈しみ、そして骨上げという儀式の場の厳粛さと透明感が伝わってきます。

わたしも数年の間に、故人の骨上げに幾度となく臨んだことがあります。お骨がこすれあって生じる音は、火葬のさいちゅうに感じる重低音のあとに耳にするせいなのか、軽やかで、すがすがしさすら覚えます。骨上げは日本独特の風習のようで、生者も死者も白くすがすがしくありたいと願う日本人の精神性が反映しているように思います。

☆白の力を借りて自分の思いを表現した歌を「百白百首」のコーナで紹介しています。