心がけ6 未完成でも書きためれば〝利息〟

 伝えたい思いの断片ではあっても、ひとつの形にするには大きなエネルギー、気力が必要です。なかなか書けないものです。そんなときはやはり、だれに読んでもらいたいのかをはっきりさせることが大事です。決まると、その後の作業が動き始めます。
思いを届けたい人はだれですか。友人、知人、両親、きょうだい、子ども、孫、仕事関係の人、不特定多数の人…。決まれば、その人に届きやすい文体を選びます。
では、何を書くのか。どれを書くのか。思いは主張するだけでは伝わりません。伝えたくなった内容と理由を具体的に書いた方が伝わりやすいです。写真の活用をお勧めします。伝えたい思いに関連する写真を見つけるのです。文章をつづるときは、その写真をなぜ選んだのか、その思いも書きます。お孫さんに読んでほしいのなら、「これはね、じいちゃん(おばあちゃん)にとって大事な写真です。どうして○○ちゃんに知っておいてほしいのかというと…」というような語りかけ口調で書き始めるのがいいと思います。
写真は新たに撮りにいってもいいと思います。「更級への旅」では、「このことはどんな写真があれば伝わるか」と考え、過去の写真がなければ、新たな写真を探しました。手元にある写真を紹介したくて文章を作り始めたこともありました。
文章の長さ、起承転結は気にしなくていいです。とにかく伝えたくなった内容と理由を文章にし、写真、仮りのタイトルもつけ、それをワンセットにして保存します。データーであればパソコンに、手書きであれば写真と一緒にケースに入れましょう、完成原稿でなくてかまいません。まずは貯金です。「更級への旅」の場合、「あそこは書き直したい」「もっと書き込みたい」「これも調べたい」といった〝利息〟がつきました。そう思ったときに、取り出して手直しし、また戻し…を繰り返し、仕上げていきました。