心がけ5 思いの形は断片から

 長く書こうとしない。一度にたくさん書こうとしないー伝えたい強い思いがあるときほど、心がけたらいいと思います。書きためることをお勧めします。受け取った人もその方が読みやすいと思います。貯金と同じです。可能な範囲で少しずつ書きためていきます。まとまったものになれば、あとは再編集。冊子や本などの形にしやすくなります。再編集にはまた力が要りますが、たくわえがあればその作業は楽しいものになると思います。
更級への旅」の場合、伝えたい思いは「更級という地名の力」でした。そのことを証明する歴史やエピソードをいくつも紹介していけばいい、積み重なればすごいものになるはずと考えました。
小説や物語の場合は、一から書き始め、最後まで書き続けていくものですが、伝えたいのが自分の経験や感じたこと、発見したことであるなら、断片を積み重ねるのが、負担が少ないと思います。系統立てて書いていこうと思わない方がいいです。
断片はジグソーパズルのピースのようなものと言えます。仕上げるとき足りないピースがあれば、そのピースのことを書くのです。はめ込めば「伝えたい思い」の形が出来上がります。

*断片を積み重ね、寄せ集めて「伝えたい思い」の形に整える―わたしの場合、それは2020年に作った本「白 さらしな発日本美意識考」です。「更級への旅」のシリーズではちょっと取り上げづらいけど、深い関連があると思う発見や気づきをエッセイや日記のような文章にしてホームページに載せてきたのですが、それを加筆修正したり、新たに文章を書き起こしたりして本にしました。日本の歴史や文化を貫く美意識は「白の美意識」だと更級の地名力を解明してきた立場から世に問うてみたいと考えました。