心がけ4 難しくは書けない「ですます調」

 「更級への旅」は、文体が「ですます調」です。生家の雑貨店のお客さんに読んでもらうのを目標に始めたので、自ずと文体が定まったのだなあと今になって思います。更級という地名の魅力の裏付けが重要だとは思っていましたが、研究者の論文などによくある「だである調」にすることは考えませんでした。
「ですます調」にしたのは、とてもよかったと思います。この文体だと、自分が理解できていないことは書けないのです。「ですます」は語りかけ口調でもあるので、自分で説明できる言葉が自ずと必要となります。書いてきて思うのは、最初から説明できる言葉を見つけていたわけではなく、書いていくうちに見つかってきたということです。まだだれも指摘していない更級の歴史や文化、エピソード。それを伝えたいという思いで書き出し、なんとか文章にまとまったことが多くあります。
「読みやすい」「楽しい歴史」「文章がいい」などと、読んでくれた人から感想をいただいたときは、うれしかったです。それは「ですます調」で書いてきたことが大きかったと思います。