心がけ2 思いを裏付けるものが書かれているか

平安時代に書かれた更級日記(さらしなにっき)。題名が「更級」だから、わたしが卒業した更級小学校の所在地「更級村」のことが書かれているのではと考え、読んでみました。調べ始めると、題名の「更級」は、更級村の背後にそびえる冠着山(かむりきやま、別名姨捨山=おばすてやま)をシンボルとした更級郡のことを指すと知ったので、対象を地元とその周辺に広げたのですが、結局、更級郡のことは何も書かれていませんでした。
とてもがっかりしました。しかし、研究者の間では題名の「更級」は、わたしの生まれた更級村があった更級郡のことを踏まえたものであるのは通説。更級ことは何も書かれていないのに、千年前にこの日記を書いた女性はあえて更級という地名をタイトルにした…。このこと自体が「更級」という地名のすごさなのではないか…。こうした驚きと発見が「更級への旅」を始めるきっかけです。創刊号では、そうした経緯と発見を書きました。
発見した更級の地名のすごさを伝えていくときに大事なのは、裏付けでした。裏付けがないと独りよがりになってしまいます。平安時代の都人をはじめ日本人が更級という地名から受け取ったイメージ、地名にまつわるエピソードなどを調べ、集めることにしました。

*更級への旅は2007年に47号までを再編集して「古今さらしな集」という本にしました。