心がけ26 言葉は贈りものになる

 山梨県の支局に赴任していたとき、地元の新聞社の短歌コーナーを担当している記者が、選者から短歌をプレゼントされたことがあるという話を聞きました。寄せられた新聞読者からのたくさんの短歌を選者に届け、入選作を決めてもらい、評を受け取り、紙面に字を間違えないようにレイアウトする。毎週のやりとりですから、選者と担当者は気心が知れた間柄になるでしょう。記者にとっての何かの節目のタイミングで、「それでは」と選者が節目にふさわしい短歌を作ってくれたそうです。
そのエピソードの影響があったと思います。就職する娘に短歌を贈りました。「二十四の瞳」や「楢山節考」で知られる映画監督の木下恵介さんが亡くなった日に誕生した子でした。当時仕事で「映画」を担当しており、まもなく生まれるというときに訃報が入り大変でしたが、娘の名前は木下監督の「恵」の字をもらおうと決めました。そのような経緯は、娘に長じる過程で伝えてはいたのですが、就職の節目なので父親としての思いを短歌で伝えてみることにしました。

 授かりし字のごと君は育ちたり木下監督祝福してる

どのように娘が受け取るかどきどきしていましたが、届けたメールに返信があったので、まずまずでした。