重きこと一つ抱へし旅なれば足袋の白きをしかと履きたり 田中昭子

生きていくうえでは、覚悟を決めて対処しなければならない問題が起きます。直面した作者は和服を着て、遠出をすることになりました。

白い足袋は履いたことはありませんが、野良仕事で地下足袋を履いたときの感覚を覚えています。親指とほかの指を分けて先端に差し込み、フックを掛けて足首を巻き終わり、立ったときの体の引き締まり。

和服をたしなんでいる作者なので、そうした感覚はふつうのものだったと思いますが、「重きことを一つ抱えて」旅に出るとき、見慣れた足袋であるけれど、その白さが特に心に留まりました。旅の途中も折に触れて、白い足袋を見つめたことでしょう。作者は、足袋の白さを再発見することによって、身も心も引き締まり、問題に対処することができたかもしれません。作者の歌集「白」に収載。