わたしくの今日を消すのにふさわしい石棺型の白い浴槽 杉﨑恒夫

家のお風呂を新しくしました。浴槽は家人の強い希望があり、長方形のスクエア型と呼ばれるものにしました。曲線で構成されたゆりかご型よりも、脚をゆったり伸ばせるというところが理由です。お風呂ができたあとに、この歌を知りました。まさしく「石棺型の白い浴槽」なのです。

からだにまとわる一日の汚れと疲れを落とすことは、明日をまた生きることにつなげる行為です。しかし、これは「今日を消している」とも言えるわけで、残酷な行為でもあります。新しい浴槽が、白木の棺の色と形にそっくりであることに気づいてしまってからは、余計浴槽が「今日を消す」場であるなあという思いになり、必ず訪れる終末の現場とも重なるようになりました。

「あー、極楽、極楽」。お湯に深く浸かるとき、無意識に唱えてきたこの言葉。人生には限りがあることに自覚的になります。 「パン屋のパンセ」所収

☆白の力を借りて自分の思いを表現した歌を「百白百首」のコーナで紹介しています。