スーパーの帰りの橋に妻といて小魚に照るこの世のひかり 芦原学(兵庫県)

妻と一緒に歩いてスーパーに買い物に行った夫が、帰り道の橋の上で、川面で群れる魚のうろこが光っているのに気づき、足を止めました。陽気が良い日でもあったのでしょう。自分たちの暮らしが、明るく温かい、大きなものに包まれている幸福感を覚えたのです。

 「照る」は不思議な言葉です。「照らす」は光りを当てて、当てられたものが光るという一方向の言葉ですが、「照る」は光りをあびたものが、あびた光を照らし返し、光りにあふれている立体的な空間を感じさせる双方向の言葉です。

 小魚の光りは実際には小さなものですが、動きがあるのでキラキラとします。そうした小さな光りの集まりが、日々食べたり使ったりするものを手にして伴侶と一緒にいられる暮らしを、照らし上げたのです。透明な白光の中でおだやかに微笑んでいる仏たちの世界を感じます。第25回NHK全国短歌大会(2024年)の特選作品の一首

☆白の力を借りて自分の思いを表現した歌を「百白百首」のコーナで紹介しています。