深みどり肩怒らせてピーマンの守る空白真二つに切る 八嶋智津子
新鮮なピーマンに包丁を落としたときの空洞感と、白い種、種をつけている白い綿(わた)。
そのときのいっしゅんのすがすがしさ、爽快感は、料理をする人なら思いあたるはずです。作者もまずは縦に包丁を入れたのでしょう。ヘタのまわりの盛り上がりの部分に、ボディービルダーのような筋骨隆々の姿を思い浮かべました。一方で、切ったあとのピーマンの中のすかすか感。そのアンバランスに作者はおかしみを感じたのかもしれません。
白い綿の部分には栄養がたっぷりあるとのことなので、こそげ落とさず、そのまま食べるのがいいそうです。
ピーマンは空白を育てています。(2018年7月29日付朝日歌壇入選作)
☆白の力を借りて自分の思いを表現した歌を「百白百首」のコーナで紹介しています。