肉眼を通して文章は読まれるものなので、作文は眼にやさしいほうがいいと思います。漢字が多い文章は疲れます。原稿を読んでもらったデスクから「真っ黒だな」といわれたことがあります。特に取材テーマが硬いものだと、漢字の組み合わせの熟語を使うことが多くなり、また記事は短さを要求されるので、熟語を使いがちです。「しあわせ」を「幸福」とすれば2字減らせます。一方で一字増えますが、「やさしい」は「優しい」より、やさしい感じがします。
思いを伝えるには、内容によっては漢字や熟語を多くすることが有効なこともあるでしょうが、基本は熟語ではないことばを使うとか、ひらなが書きすることを検討してみるといいと思います。ビジュアルセンテンスです。
新聞の子どもニュースの記事を作ったり、絵本を制作したりしてきて、文章の中で漢字をどうするか、いろいろトライしてきました。それで思うのは、何を漢字として残し、何をひらがなにするのかは最終的には全体の中で判断するということです。
短歌を作るときは、なるたけ漢字を減らすことにしています。31音におさめるために熟語を使いがちです。必要な場合は、動詞をひらがな書きにし、漢字を減らすといった工夫をします。熟語と名詞が漢字でならぶと、そこだけ黒くなるので、あえて一つの漢字をひらながにすることもあります。作りはじめたころの歌をみると、思いを伝えたいことが優先したのでしょう。新聞記事のように漢字を使う部分はそのまま漢字を使っているものが多いです。短歌は韻律、口の端にのせて唱えたときの調べが重要、なるたけ意味を押しつけるような漢字を使わないほうがいいという助言を受けました。
短歌と同じように作文は届けたい思いの結晶です。届けたい相手が、手にとって身近に置いておきたくなる工夫があったほうがいいと思います。