「いい文章だなあ」と思わずうなってしまう文章があります。新聞には記者の記事のほか、著名人のエッセイや論考、読者の投稿などいろいろな文章があり、記者時代はそれを編集したり、読者として読んだりしていました。いまも人の文章を読むことがあります。「いい文章だなあ」と感じさせる文章は、大げさな言葉はなく、たんたんとしていて、技巧のようなものはありません。
どうしてそう感じさせるのか。筆者が作文の対象となっているエピソードを温め、言葉が生まれているという感じを受けます。料理で言えば、こく、味わい。エピソードは古いものだとしても、意味づけたり、解釈したりして、新鮮なものになっています。新しいエピソードほど味わいを出すのは難しいけれど、深く考えれば、味わいが出るでしょう。
「あの人がこんないい文章書くの」と驚くこともあります。人柄や性格が良いとか悪いとか関係ありません。いや悪い人の場合もあるでしょう。そうした文章に接すると、作文は輝くチャンスだと感じます。話したり、語ったりしているだけではなかなかできない輝きのチャンスが作文だと思います。