書いた文章にどのようなタイトルを付けるか。新聞のニュース記事は、一段落目にある言葉から見出し(タイトル)を取ります。エッセイや自分史、物語はこういうわけにはいきませんが、ニュース記事と同じように、文章の中にタイトルになる言葉を探すのを基本にするといいと思います。
「姨捨の男」というタイトルの文章を作ったことがあります。田中康夫さんが長野県知事になったとき長野支局に赴任。20年ぶりに郷里で暮らし、東京本社に戻ってから書いたものです。自分史のような物語で、「姨捨山」のふもとに生まれた「男」が主人公だったので、この二つの言葉からタイトルをつくりました。「姨捨山」ではなく「姨捨」としたのは、そうすることで高校を卒業後、長野支局に赴任するまで郷里を顧みなかった自分の半生も入る気がしました。「姨捨の男」が最後まで読んでもらえるタイトルになったかどうか、手に取ってもらった方々に聞いていないので分かりませんが、今でも、このタイトルは文章の最後まで物語と奏で合うタイトルになっているのではと思います。
新聞の真ん中あたりにある生活面や文化面の記事を書いたり作ったりしているときは、文章の最後の段落にある言葉から見出し(タイトル)を取ることがありました。日々のニュースと違って、最後まで読んでもらえる文章づくりが中面の基本だったせいもあります。タイトルが文末の言葉から取られ、そこに至る記述に魅力があれば、読者は最後まで読まざるをえないと思います。