いいなと思った短歌を、数年前から単語帳に1首ずつ書き留めるようになりました。気になった短歌はそれまでは、スケジュール帳に写したり、ポストイットに書いて壁に張ったり、スマホに打ち込んだりしていたのですが、しまい込んでしまった感じで、なかなか読み直す機会がありませんでした。単語帳のいいところは、めくれることです。金具の輪っか(リング)に滑らせていれば、また元に戻るせいもあるのだと思います、短歌が古びません。書き留めたときの自分の状況が浮かび、気になった理由を深堀りすることもできます。
最近、書き留めたのは正岡子規の短歌です。

足たたば北インヂヤのヒマラヤのエヴェレストなる雪くはましを

脊椎カリエスという病気で体の自由がきかなくなり、床に臥せながら詠んだものです。時代は明治の初め、海外旅行は足が達者な人でも困難です。それでも世界最高峰の山に自分の足で登って、そこにある雪を食べたいものだという意欲、野心に子規のすごさを感じます。体が不自由な分、想像力は旺盛だったでしょうが、雪の白さを体に入れることで、淀んでいるからだと心を清々しくしたいという思いが子規にあったかもしれません。
単語帳は高校以来40年ぶり。気になった言葉を身近において、手軽に再読できるツールです。