新聞記者をしていた50代半ば、「子ども新聞」向けの記事を2年近く作りました。新聞の1面に載るニュースを中心に、1本約300字にします。毎日、新聞用に書かれた記事を、「小学校高学年には分かるように」を目標に仕立て直していました。この仕事は「伝わる文章」という観点で大変勉強になりました。
1面に載るニュースは大抵800字以上になりますが、ニュースのポイントは最初の300字ぐらいに集約されています。この集約度ゆえに、ニュースの分野特有の用語が多くなり、そのままでは子ども記事になりません。子ども向けには「要するにどういうことなのか」という説明、意味づけを新聞記事以上にする必要がありました。
漢字の熟語はなるたけ使わないようにしました。特有の用語を使う場合は、必ずその意味を説明する言葉や説明を添えました。職場には同僚が数人おり、作った記事をお互いにチェックしました。「ここは子どもには難しい、分からない」という同僚の指摘はありがたいものでした。
郷里の長野県千曲市が2021年「月の都」として日本遺産に認定されたのを機に、「なぜ千曲市は『月の都』なのか」という出前授業を市内の小中学校で行っています。パワーポイントで画像やイラストを見てもらいながら説明するのですが、説明内容は最初、すべて文章にしておき、読み上げました。授業のライブ感が薄いという指摘があり、何度かやるうちに、だいたい覚えてしまったので、読み上げはしなくなりましたが、ベースとなった文章をつくるときは、子ども新聞の仕事がとても役立ったと思います。
小学校の先生たちは毎日、子どもに伝わる言葉遣いをしています。「月の都」についての出前授業は、学校の先生だった方々と一緒に新しいプログラムを開発しており、子どもに伝わる説明や語り方などを学んでいます。
★「月の都」の出前授業は、次のサイトでご覧になれます。
https://www.youtube.com/watch?v=WNglYRE3Ino