50代半ばごろ、北関東の中学校で「新聞記者の仕事」について授業をすることがありました。中学生に将来の仕事を選ぶ参考にしてもらいたいと学校が企画し、いろいろな職業の方が先生として来ていました。
わたしは新聞の真ん中あたりの生活・家庭面の記事を多く書いていました。「新聞記者の仕事はこういうもの」という大きなテーマで授業をするには十分な資格がなかったので、生活・家庭面の記事を作るときに心がけていたことを話しました。それは「問いを持ち続ける」ということです。
あれは問題だなあとか、あれはなぜそうなんだろうとか、あの人は何を考えてあんな仕事を成し遂げたのだろうか…など、その時々に多くの人が関心を持っているだろうことをテーマに取材しました。
テーマを決めるに当たっては。毎日の暮らしの中で気になったことを意識化するのを心がけました。子育てをしながら気になったこと、通勤帰宅しながら気になったこと、仕事をしながら気になったこと、テレビを見ていて気になったこと…気になったことがあれば、なぜ気になったのかということを頭の中で反すうして、しまっておきます。時期をみて取り出して取材し、結果を記事にするという感じでした。
「開運!なんでも鑑定団」でおなじみの中島誠之助さんの著書「鑑定の鉄人」(1995年)の中に、「捨て目を利かす」という言葉があり、それに近いなと思っていました。目に入った古い品物で気になった物は、なぜ気になったのか意識的に気にかけておくというような趣旨だったと思います。気になったものを自分の中で出し入れすることで、その価値を見極めていく…。
中学校の授業では、書いてきた記事のいくつかをプロジェクターで見てもらい、記事にしようとした経緯や理由を話しました。「なぜなのか」「どうしたらいいのか」「どういう意味なのか」と問い続け、文章などに表現していくことは新聞記者に限らず、大事なことではないかと思います。