新聞記者は伝えるのが仕事です。わたしは新聞の真ん中あたりにある暮らし面の記事を多く書きました。何を書くか決めるときに基準としたのは「明日の生活改善」でした。記事を読んだ人が、今日からは無理でも明日からは記事を参考に、暮らしを変えてみようと思ってもらえるようなものを書きたいと思っていました。
毎日生き、暮らしていると「なんでこうなの」といった違和感や、「こうなったらいいなあ」と思うことが出てきます。それが記事を作るとっかかりでした。解消したい違和感や解決したい課題が見つかれば、あとはそれを解いていくだけです。見つかった自分なりの答えを記事にしました。違和感や課題が独りよがりでないことに気を付ける必要がありましたが、毎週の企画会議でまわりの人の反応を見て、いけるかどうか確認していました。
新聞記者の仕事を始めたころ、記憶に刻まれた先輩の言葉があります。「すぐれた質問にはすでに答えが含まれている」
記者の仕事は、相手に話を聞くのが基本ですから、何を質問するかが重要です。この言葉の意味は経験を積むにつれて格言だと思うようになりました。「すぐれた質問」とは「いま解決すべき課題」ということでもあり、その課題が見つかれば記事の8割は出来上がったと思うようになりました。
なにか違和感があるけど、それはどういうことなのか言葉にできなかったり、紹介したいことだけど何に絞って書けばいいか分からず、もやもやすることがありました。なにを伝えたいのか、短いテーマのような言葉にできれば、あとはそれをどのように表現するかです。目標が定まればあとは努力するだけ。目標が定まらないと何をするか決まらないのと同じだと思います。