新聞記者を目指していた40年近く前の学生時代、カルチャーセンターの作文講座を受講しました。講師が元新聞記者だったので、就職についての情報も得られるのではと期待しました。
講座は全8回ぐらい。毎回、原稿用紙3枚ぐらいの作文を提出し、講師が手を入れ、講座では幾人かの受講生の作文について講評するといった内容だったと記憶しています。年配の方が多い中で、わたしと同じく新聞記者志望の女子学生が一人おり、この女性の作文が「良い作文だ」とよく取り上げられていました。わたしもなんとかと提出するのですが、なかなかで、この女性にはかなわないなと思ったころ、講師がわたしの作文を取り上げました。
そのときの言葉は大変励みになりました。「大谷君の作文には思いがある。大谷君は新聞記者志望だそうだが、思いのある人が僕は好きだ」
上手に書こうとはせず、というか出来なくて、毎回、それまでの短い人生を顧みる中で、人に伝えたい、知ってもらえればと思うことを書いていたように思います。作文が「うまい」「面白い」とは言ってくれませんでしたが、就職志望先の一番手に新聞社を選ぶきっかけになりました。
この作文講座に提出し、講師の赤字の入った原稿用紙は、定年を迎え昔の品々を整理していたら、ファイルに入って残っていました。一緒に受講した女子学生とは一度だけ、講座後に喫茶店で雑談しましたが、お名前は覚えておらず、実際に新聞記者になったかどうか知りません。作文講座の講師は、宇佐美承さんという方で、2003年にお亡くなりになりました。新聞記者になってからはお目にかかったことはありませんでした。