伝えたい思いは、受け取る人が「伝えてもらってよかった」と思うことによって伝わったことになります。そのために大事なことは、事前にだれかに読んでもらい感想をもらうことです。
「更級への旅」は、発行を始めてしばらくは、母にまず読んでもらいました。母はフリーペーパーとして置かせてもらった旧大谷商店(2010年閉店)の店主。母がお客さんに「面白いよ」などと、読むのを勧めてくれないとなかなか広がらないと考えました。県紙の信濃毎日新聞をよく読んでおり、文章を読むのはそれなりに好きだったこともあります。レジ前の椅子に座ったお客さんと「更級への旅」の内容を話題に、雑談が盛り上がったこともあったようです。
母には「とにかく読んで」と手渡し、感想が届くまで待ちました。「いいねえ」とか「おおしろい」とか、「へえそうなの」と言ってもらえれば、発行です。「文章のこの部分はこうした方が分かりやすいんじゃないの」という助言も、もっともなことが多く、直しました。
「こじつけじゃないの」と、母はわたしの解釈や評価を疑うこともありました。裏付けの資料は集めていたのでカチンと来ましたが、「裏付けはちょっと薄弱かも」と、さらに論拠や主張を鍛えなければならないと思うようになりました。
発表する前にまず読んでくれる「最初の読者」。信頼できるそうした読者が身の周りにいると、いいと思います。