伝えたい思いは、伝わる文章、伝わる表現にしたいものです。その際に大事なのは、「思い」がどんなものなのか自分で知っていくことです。わたしは40歳を過ぎてから、「更級への旅」という連載をフリーペーパーで始めました。自分が出た小学校の名前が、教科書に載る平安時代の「更級日記」のタイトルと同じだという驚きと、その謎を解きたいという思いからでした。
実際に調べ始めたのは、中学でのその驚き体験から約30年後ですが、解こうとした謎の答えを多くの人に知ってもらいたくて仕方がありませんでした。答えの全貌をつかんでいたわけではありませんでしたが、謎解きの過程を書いていけば、全体や核心にたどりつけるのではないかという思いがありました。
「調べていけば、何かすごいものにたどりつきそう」というワクワク感。それを伝えるにはどうしたらいいか、どう表現したらいいかと考えるようになりました。
*「更級日記」題名の謎を解こうとして約20年。現時点での報告としてまとめた本が「白 さらしな発日本美意識考」。この前段階となるのが「地名遺産さらしな」です。