単行本「まんが 松尾芭蕉の更科紀行」

 「月の詩人」と呼ばれる松尾芭蕉にとって、古来、観月の名所だった信州・さらしな(更科)の姨捨山はどうしても訪ねなくてはならない聖地でした。その旅は「俤(おもかげ)や姨ひとりなく月の友」の句を生み、「更科紀行」となって芭蕉文学の重要な位置を占めます。美濃(岐阜県)から木曽に入って信濃路をたどり、江戸に戻っていくその旅程は原稿用紙に換算すると数枚ですが、その分、凝縮された芭蕉の熱い思いが感じ取れます。
著者、すずき大和先生はその取材や碩学の研究成果を踏まえて、その旅路を大胆に膨らませ、新しい芭蕉像を提供します。「更科紀行」には月の詩人、芭蕉の真髄が凝縮されています。なぜ、芭蕉は姨捨山で涙を落としたのでしょうか。 なぜ、芭蕉は自分の文学の集大成となる「奥の細道」の旅の前に、さらしな・姨捨を訪ねたのでしょうか。独自の空間と間を描く漫画家の著者だから達成できた野心的な作品です。
A5版・上製 190ページ 定価:1600円(税込)。松尾芭蕉の更科紀行の世界を絵本化した「ばしょうさんとおばすて山の月」と合わせてどうぞ。

 著者:すずき大和さんの略歴 漫画家、絵本作家。福島県伊達市出身。漫画家、絵本作家。空間や間の使い方に独自の作風があり、芭蕉をテーマにした作品はほかに、「まんが紀行奥の細道」(日本漫画家協会賞特別賞)、「まんが 松尾芭蕉の更科紀行」。「哀MY展覧会」で文藝春秋漫画賞を受賞。ほかの著作に「ペタルスシリーズ」「ささやき」「まんがたけくらべ」「ことわざ絵本」「いちりんじいこ」など多数。海外でも人気があり、「ぺタルスシリーズ」は米国で発行され、「いちりんじいこ」は韓国で翻訳出版。NHK美術センターに11年間在籍し、「ものしり博士」「音楽は世界をめぐる」「ひょっこりひょうたん島」を担当。共同通信の世相漫画も手掛けた。