活動の心得となった矢島久和さんの言葉

「さらしな」の地名を地域づくりに活用しようという「さらしなルネサンス」の活動をしています。会の発足は2015年、地域経済にも資する活動にしたいと考え、協賛をいただけるかどうか地元の企業経営者を訪ねました。お目にかかることのできたお一人で、さらしなの地名を再び世に送り出す活動の心得となる言葉をいただいた、フレックスジャパン前会長の矢島久和さんが1月30日、逝去されました。

ご自宅に迎えてくださった矢島さんは、一通りの説明を終えたわたしに言いました。
「戦略の失敗は戦術をもってしては補えない」
ルネサンス活動を展開する中心のまちの名前は、2003年一つの市と二つの町が合併してできた千曲市です。合併に際しては千曲(ちくま)と更科(さらしな)が新市名の候補となり、市民の投票できん差で「千曲」が上回ったことからの名前です。このことを振り返って、矢島さんが私に用意していた言葉でした。
この後、矢島さんは、会社経営と戦略の関係についてお話になったのではないかと思います。記憶が定かではないのは、矢島さんの言葉がルネサンスの活動の困難さを指摘し、本質をつかれて、動揺してしまったからです。合併によって誕生する新しいまちの名前は「戦略」であるべきだというのが矢島さんのお考えでした。
矢島さんのお考えにしたがえば、ルネサンスの活動は「戦術」となります。わたしは「戦術を駆使して戦略を補いたいと思います」と無理をして強がりました。矢島さんはだまって聞いていました。
以来、一年の活動の成果物と報告をお届けに、毎年5月ごろお目にかかりました。取り組んだ戦術の内容をお知らせする場でもありました。わたしの職業では経験できない、企業経営の心得や実情、難しさなどを教えていただくことができたのは貴重な体験でした。組織のトップは戦略を考え、磨き上げ続けていくのが仕事だと感じました。
矢島さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。