美しさらしな(2) 富士山とさらしな

 「さらしな」という地名の魅力は、すがすがしさと躍動感。唱歌「春の小川」を歌っているときの気分と重なる。
 「春の小川はさらさらゆくよ~」「岸のスミレやレンゲの花に~」「姿やさしく色美しく~」「咲けよ咲けよとささやきながら」。さ行とら行の音が繰り返される。「ら」の響きは「らんらん」と使われるように、快活なイメージを呼び起こす。新しい生活が始まる新年度を代表する歌になった理由だ。
 すがすがしさと躍動感は、毎日を過ごしていくときにとても重要。朝のコーヒー、現れる朝日もそうだ。美術館に行って「いいなあ」「すごいなあ」と感じるのも、すがすがしさと躍動感のしわざ。
 仕事の任地が去年から山梨県甲府市となった。住まいから見える富士山を、カメラに収めたくなることが多い。茜色の朝日がさした峰、刻々と色や姿を変える雲や空。すごいと思う。
 世界遺産となった富士山の魅力の核心と、「さらしな」の魅力の核心は同じだ。