印象派の画家クロード・モネが雪景色を描いた「かささぎ」という作品は、彼が世界に知られていく基盤だったことを当サイト(6月7日)で書きました。画題の「かささぎ」は「カラスの仲間の鳥」と紹介したところ、カラスは黒いので作品の魅力と重ならないという指摘を受けました。
私も最初は「かささぎ」という鳥は知りませんでした。佐賀平野を中心に生息し、天然記念物にもなっているそうで、長野県でも見られるのでしょうか。おなかや広げた羽の先半分ぐらいが白いのが特徴で、モネの絵でもよく見ると、おなかの部分が白くなっています(影になる部分なので実際は青みがかっています)。
そんなかささぎですが、実は日本にも今から1300年も前、かささぎをモチーフにした芸術作品があります。万葉集の編纂にかかわり、最も多くの歌が万葉集に載っている大伴家持(おおとものやかもち)の次の和歌です。
かささぎのわたせる橋に置く霜の白きを見れば夜(よ)ぞふけにける
かささぎは中国で古来、七夕のとき、つばさを広げてたくさん並び、天の川の両岸にいる彦星と織姫を再会させる橋の役割を担った伝説がある鳥。大伴家持は、そのことを踏まえ、天皇がいる宮中の橋に夜降りた霜の様子を見て、天の川を渡したかささぎの羽のようだと詠んでいると解釈されています。
写真は、空を飛んでいるときのかささぎです。黒の部分と白い部分のコントラストが鮮やかです。何羽も集まると黒の中に白い点がいくつも連なり、白い川のようにも見えるでしょう。これがちょうど夜空にきらめく星の集まり(天の川)をイメージをさせたと考えられます。
この大伴家持の和歌については、更級への旅233号で、万葉集が生まれる時代の都人が白に対して抱いていた神聖さ、理想を示す代表的な和歌の一つだと書きました。白の力を強調するために「かささぎ」という鳥を、モネも大伴家持も、時代は1200年も違いますが、自分の芸術に活かす活用しています。これも興味深いです。
なお夜の光が強すぎて天の川を見られない人が世界で増えているというニュースを朝日新聞がネット配信しています。http://www.asahi.com/articles/ASJ6C366GJ6CUHBI00N.html 日本人は人口の7割がすでに見えない場所に住んでいます。