冠着は日本のカイラス山、密教法具の意味は?

 文と写真・さらしなの里歴史資料館学芸員の翠川泰弘さん、さらしなの里友の会だより32号=2015年春=から

 カイラス友の会samuneiru標高6656㍍、中国チベット自治区ヒマラヤ山系に位置する独立峰カイラス山(写真)。チベット仏教、ボン教、ヒンズー教などの聖地とされ、五体投地による信仰心の厚い巡礼者が多く訪れる聖山である。
 私のなかで、このカイラス山と更級の「冠着山」がだぶってしまう。
 古代からの聖地とされ、信仰の山として崇められてきた冠着山。カイラス山と山体の形状さえもが類似して見えてしまう。
 冠着山の麓、扇平遺跡からは、保存状態の良好な密教法具のセットが出土している。戸倉町誌でも紹介されているが、元京都国立博物館の久保智康教授に実見いただいたことがある。平安時代末から鎌倉期にかけての所産と推定され、密教法具としてかなり貴重な資料であると評価できるとのことであった。
 出土地は、経塚等の祭祀遺跡の可能性もあるが、あるいは、密教寺院の存在も否定できないと語った。地図上では、大きな平坦地は確認できないが、壇状を呈するテラスが連続して検出できれば、その可能性も大きいと指摘する。
 現地踏査にも訪れたそうであるが、残念ながら時間がなく出土地までは到達できなかったとのことである。
 多くの伝承を持ちながらも実像のつかみ難い冠着山。密教法具出土の意味する内容は深い。
 扇平遺跡周辺の地籍名、地形、伝承等すべての情報を網羅して実態の究明にあたりたい。具体的な冠着山の実像に迫れるものと確信している。