この写真は1935年(昭和10年)に発行された長野県の観光マップです。長野県の歴史文化遺産をデジタル化して紹介する「信州デジくら」からお借りしました。右はそのマップの中から姨捨棚田を中心とする旧更級郡域を拡大したものです。国民の祝日として「山の日」(8月11日)が制定されたのに合わせ長野県立歴史館で展示されていたこのマップの複製を長野県千曲市の会社経営者、馬場條さんがご覧になり、姨捨棚田がマップの中心に描かれているのに感激したと連絡をもらいました。
1935年ごろ信州は鉄道網が整備され、県外からのたくさんの観光客が訪れるようになっていました。長野県立歴史館の解説によると、このマップのタイトルは「長野県之温泉と名勝」。長野県が当時の観光地図絵の第一人者の吉田初三郎さんに依頼して描いてもらいました。東から西に向かって日本海から太平洋まで俯瞰する雄大な構図。原画は横幅4メートルを超える大作だそうです。長野県観光協会がこの絵を使って「観光信州」というパンフレットを制作したそうです。
大作のため巻物状に保存されていたこの原画を歴史館の職員が開いたときには、色彩がとても美しかったので、「お~!」という感動の声があがったそうです。なるべく近くで見てもらいたいのでこの絵を展示するための専用の台を作ってあるそうです。残念ながら、「山の日」の制定記念展示では半分より少し小さく縮小した複製版。いずれまた専用台に載った大作が見られる日を楽しみに待ちたいと思います。
姨捨の上の白い部分の札の中には、この写真ではよく見えませんが、「猿が番場スキー場」と記されているそうです。姨岩のような巨岩も見えます。それにしてもなぜこのマップで吉田さんは姨捨棚田を中心にしたのか。吉田さんの頭の中には信州一の観光名所という思いがあった?…。棚田はほかの地には描かれていません。姨捨には水を張った大きな田んぼが幾重にも階段状に並んでいます。水のピラミッドのように見えてきました。
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