更旅231号・冠着山古峠の古道を復元!

更旅・古峠の馬頭観音samuneiru

 この写真は、冠着山北側の尾根筋「古峠」のすぐ下にある馬頭観音(体高約80センチ)です。江戸時代の明和年間(1764〜72)に造られました。馬頭観音は観音様の頭上に馬の頭をいただき、慈悲の強さを表し、荷物の運搬や移動には欠かせない馬の供養と結び付き信仰されるようになりました。見る方向で表情が変わりますが、この写真だと馬は笑っているようにも見え、両手の平を胸元で心を籠めて合わせている観音様の姿とあいまって大変慈悲深さを感じます。
 古峠は奈良や平安の都から信濃国に通じていた古代の国道、東山道が日本海に抜ける支道(シリーズ31、33、34参照)が通っていたとされます。都人はここで「ついにあこがれのさらしなに着いた」と感動したでしょう。地元では鉄道や車のない時代、薪取りや物資の運搬などに利用されていました。この馬頭観音があるのはその道中、ワタクボ(長野県千曲市羽尾、旧更級村)と呼ばれる地籍で、急峻な山中に屹立している巨岩の懐の中に抱かれるように鎮座しています(写真上)。手前の二つの観音様と三体セットで並んでいます。岩の近くには広場もあり、馬も休ませていたのだと思います。
 歩く人がいなくなり荒れていたこの道を2014年6月21日、地元住民の「冠着山の自然と文化遺産を保存する会」(塚田勝寿会長)が藪を払ったり倒木を片づけたり崩れた道を直したりして復元させました。案内標識や解説板も設置。さらに歩きやすいように整備を進める予定です。

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