シリーズ183号に続き、銀閣寺です。銀閣寺は白い砂を敷き詰めた銀沙灘(ぎんしゃだん)と白砂を盛り上げた向月台(こうげつだい)とのセットの写真でよく紹介されます。禅宗の広まりとともに、庭に敷かれた白い砂は伝統的に水のイメージでとらえられてきているので、銀閣寺のこの庭は月と水の相性の良さを意識したものであることは間違いありません。ただ、NHKテレビ「銀閣よみがえる〜その500年の謎」で、この白砂は実は創建した足利義政の時代にはなく、江戸時代になって敷かれたものであることを知りました。残された絵図を見ると、白砂を盛り上げて打ち固めた向月台も初めは渦のようなものでしたが、時代が下るうちに盛り上がり、江戸後期には現在のような姿になっていたそうです。
この写真の撮影ポイント付近は、別の建物の縁側に座れるので、しばらく眺めていました。時間がたつにつれて、銀沙灘が海のように見えてきました。白砂は数十センチほど地面より高く盛り上がっており、線の文様を間隔を置いて施しています。打ち寄せては返す波のようです。少し向こうに見える向月台は頭の部分が平らに切れているので富士山のように見えてきました。山頂に白い雪が被った富士山のイメージです。白い月の光に照らされた海に浮かぶ富士山と銀閣、この庭自体は狭いものですが、海に見えてくると、大変広大な空間がイメージできます。昼間でも白光に彩られた月の館・銀閣のスケールの大きさを楽しむための演出にもなっていると思いました。
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