シリーズ185号に引き続き、京都の東山についてです。写真は平安京の創設から1100年を記念して明治28(1895)年に造られた平安神宮(京都市左京区)の境内で、東山の稜線を映したものです。平安京を開いた桓武天皇と平安京最後の孝明天皇を祭る本殿は、向かって左の北側にあり、この写真で正面に見えるのは神楽殿。現在は神前結婚式も営まれる場所です。
平安神宮の最大の特徴は、平安時代の天皇の住まい(御所)や、行政施設などがあった区域(大内裏)の再現を目論んだ構造になっていることです。平安時代、天皇の日常の住居でもあった清涼殿(シリーズ40、67、145号など参照)の縁側も、この写真の方向に開いています。つまり、天皇は東山の稜線から上る月を楽しんでいたのです。月が上る東の方向には「月の都のさらしなの里がある」とおそらく想像したり、お付きの人たちと話題にしていたでしょう。
この写真は初夏に撮影しました。白い玉砂利が日差しを浴びて、より白さを際立たせていました。純白、清浄をたっとぶ神道の精神世界にふさわしい空間でした。画像をクリックすると、PDFが現れ、印刷できます。