さらしなの里のシンボル冠着山(別名・姨捨山)への一つの登山道沿いに「くろたき」と地元の人が呼ぶ滝(写真上)があります。落差約10㍍。肌のきれいな杉の大木を両脇に従え、大変神々しい滝です。
羽尾区(旧更級村)を構成する一つの集落、御麓(シリーズ174号参照)の上方にその登山道の入り口があります。冠着山頂の冠着神社への参道の入り口でもあり、鳥居を抜けて20分ほどの所です。
「くろたき」には「黒滝」「久露滝」という漢字があてられ、現在は「久露滝」が一般的ですが、もともとは「黒滝」が先ではないかと思います。合併前の千曲市域を構成していた戸倉町誌の「自然編」によると、滝の岩は安山岩。黒みがかっていることから、「黒滝」の名前が付けられた可能性があります。
「くろたき」と口で唱えている分には、「黒滝」で違和感はありませんが、文書に書きつけるときに、ある人がある時点で「久露」の字をあてると、より滝の存在と価値がパワーアップすることに気がついたのだと思います。
「露が久しい」という言葉は、水が途切れないというイメージを強調します。滝の下流はさらしなの里の水田地帯です。昔は日照りが大変心配だったので、「久露」には雨乞いの願いも込められます。滝の水はしぶきになるので「露」にぴったりです。
佐良志奈神社の社標和歌「月のみか露霜しぐれ雪までにさらしさらしせるさらしなの里」(シリーズ3、173など参照)ことを思いだしました。
この和歌は「さらしな」という地名の白色イメージを徹底して遊んだものですが、和歌の中で「露」という言葉が白さのイメージとの関連で登場しています。しぶきの色は白に見えます。その意味で「久露滝」の漢字はさらしなの里にぴったりです。
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